アクエリアスの猫 | 連載小説 |
ブラックマジックな引きこもりダンサー
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「ダンサー?」 ぼくとQQ-6はハモり声を上げた。さすがにぼくが言語回路をいじっているロボットだけのことはある。ぼくと同じタイミングで同じ言葉を発するなんて! だが、そんなことはどうでもいい。ポーラだ。問題は彼女なのだ。 「ここは研究施設だよ、ポーラくん。君はほんとうに研究員?」 「本部からわたしの資料がきてるって、さっき、あなた言ったでしょ? なに呆けてんのよ!」 そうだった。もし彼女が本部から派遣された人間でなければ、QQ-6がとっくに不審者扱いしているはずである。ぼくは愚問を恥じた。そして腹を立てた。自分に対して、さらには、ポーラの高慢な態度に対して。そんなムカつく女に魅了されている自分に対しても、かなりムカついている。 「で、わたしの部屋はどこ? 着いたばかりで疲れているの。ちょっと休みたいわ」 きっと、ぼくはボーラの目に、茹で上がったタコみたいにまっ赤な仁王立ち野郎に映っているに違いない。 「……」 「ちょっと聞いてるの?」 「…………」 「もういいわ! ねぇ、ロボットさん、部屋まで案内してよ」 ポーラはぼくの横に立っている金属の固まりに声をかけた。 そして数秒後に、手塩にかけたも同然の、友と言ってもいいくらいのQQ-6が、ぼくの心のなかで金属の固まりからゴミクズに成り果てた。 なぜって……。 「もちろんでございます。ポーラ様! 長旅でお疲れでしょう。ポーラ様のお部屋は最高に居心地のいい個室でこざいます! ささっ、どうぞ、こちらへ」なんて、やつが返答したからだ。 ロボットのくせになぜこんな真似ができるのか! ぼくは憤慨した。ばかみたいに憤慨した。情けなさと怒りで涙がでた。もちろん少しだけだけど……。 「QQ-6! 裏切るつもりか!」 「は?」 まさにロボットとしか言いようのない冷たい人工的な声だ。 「ライデンさん、なにをおっしゃっているのですか。ポーラ様は自室の場所がわからないのです。案内して差し上げるのは当然の義務です」 ぼくのプライドは、鼻水だらけのハンカチとなって、ポケットに収まっている。もちろん、それを知っているのは、ぼくだけだ。 「わかった。行け!」 暗い声を通路に投げ捨てると、ぼくは外へ通じるドアへと向かった。あの四本の黒い支柱が何なのか、確かめる必要がある。さっきの震動の原因はあれに違いない。ポーラはどうやってここに来たのだろう……。 |
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