アクエリアスの猫 連載小説



宇宙船レインボーブルー



 7.たいへんなことになったぞ

 爆発はレインボーブルーの船外カメラにも映し出された。
「危険回避のため惑星の軌道から離脱する」
「どういうこと? ブルー」
「爆発が拡がる可能性がある。フィナ王女。愚かな連中がいるのだ」
 タナオをのぞく、三人は立ち上がった。壁の映像は消えたまま、ぼんやりと沈む黒色が映し出されている。
「おれの家はすっ飛んでしまったのか!」
 ギミドは怒りの声をあげた。
「もちろん、そうだ。被害はこれからもっと広範囲にわたるだろう。大勢の賞金稼ぎたちがたくさんの武器を持ち込んでいたのだ。そして、死をいとわない連中もこの宇宙には多い。きみにとっては無謀に見える行動も、かれらにとっては名誉であったりすることもある」
「なんだか、よくわからないけど、説明ありがとう。さすがは生きている船だ」
「被害を食い止める方法はないの? わたしたちにも、なにかできることがあるはずよ」
「ない」ブルーは即座に答えた。「この星域で起こることに不用意に関わるのは好ましくない」
 突然、タナオが立ち上がった。わなわなと手が震えている。ギミドは、こんなタナオを見るのは初めてだった。
「ぼくの農場はどうなるの!」
 どうなるわけもない。なくなったのだ。ギミドは親友の顔を見つめた。
「タナオ……」
「ヒロンBに、ぼくを降ろしてくれ!」
「そんなことできるわけないだろ」
「ぼくは帰るんだ!」
「危険だから、こうして離れているんだ」
 ギミドはタナオの肩をゆすった。
「冷静になれよ」
「なれるかっ!」
 タナオはギミドの手を振り払った。
「タナオさん」フィナがつぶやくようにいった。「ごめんなさい」
 なにを謝っているのか? ギミドはフィナを見た。
「フィナさんがあの凶悪犯を連れてきたわけじゃないのに、なにを謝っているの?」
「ごめんよ、タナオ」
 エコウルまでが頭を下げた。
「ど、どういうこと?」
 ギミドは納得がいかないというふうに訊ねた。
「わたしたちが来なければ、よかったんです」
「なに言ってんだか……。ぜんぜん関係ないよ」
「我々がこの星に来たことと、タナオの農場が焼失したこととは、なんの関係もない。フィナ王女、あなたはとても疲れている。ドックに診てもらうのだ、今すぐに」
「わたしは大丈夫よ」
「姫は疲れている。一緒に治療室に行こう」
 エコウルがフィナの手をひいた。
 やつれているようには見えない。ギミドはそう思った。かれの目の中でフィナは充分すぎるほどに輝いていた。
「フィナさん、そんなに疲れているの?」
「わたしは大丈夫です」
 フィナがそう答えたときだった。タナオが突然、ソファーに倒れこんだ。あっという間の出来事にギミドは手を差しのべることもできなかった。ソファーの上に横たわる親友の顔は蒼白だった。
「どうやらタナオも治療室に行きたいらしい」



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