アクエリアスの猫 | 連載小説 |
宇宙船レインボーブルー
8.ブルーの言葉 センタールームにはフィナ、エコウル、タナオ、ギミドの他にドックもいた。そして、あの負傷した賞金稼ぎも痛々しい包帯姿で部屋のすみに立っている。 タナオは卒倒してから、それほど時間が経っていないこともあり、まだ、どこかぼんやりしていた。ブルーの急な呼び出しの意味を考えるでもなく、集まった人々の中で、ただ、うつむいてじっとしていた。 ブルーの中性的な声が天井から聞こえてくる。 「とても大事な話があるのだ」 室内は静まり返った。元から誰も話していなかったが、ブルーの声が聞こえると、静寂が室内を支配した。 「まず、最初に紹介しよう。みんなが助けたこの男はモート・スラン。テリートーを追ってこの星にやってきた賞金稼ぎだ。莫大な借金を背負っているが、わたしがスキャンした限りでは安全な男だ」 モートは軽くうなずいてみせた。 「自己紹介は後にして、今は話を聞いて欲しい」ブルーは続けた。「わたしは長い眠りに入らなくてはならない。きみたちが思うところの冬眠のようなものだ」 フィナが驚きの声を上げた。 「そんな……」 「王女よ、あなたは薄々感づいてはずだ。わたしは眠りにつく。フィロソリスへの道は、自らの力で切り開くしかない」 「ってかさぁー、その冬眠って、どのくらい眠るのさ?」ギミドはいった。「それに、とつぜん冬眠といわれてもねぇ……」 「予感はしても、いつだとは正確にはわからないのだ。だが、おそらくはあと六時間以内だと思われる。わたしはもうすでに眠くなると意識のコントロールができず、すぐに眠り込んでしまう状態だ。そして、時間は一年かもしれないし十年かもしれない。不確定だ。眠ってしまえば目が覚めるまで、わからない」 「ごめんね、ブルー。わたし、あなたがそういう時だと知らなかったの」 「とにかく、今すぐにでも眠くなってしま可能性があるので、話をすすめよう。わたしが眠ってしまったあとのことだ。わたしはモートにボディガードを頼んだ。王女がフィロソリスに帰り着くまでのだ。だから……」 ブルーの声が途絶えた。 「おいおい、眠くなったのか?」 ギミドがうんざりした声をあげた。 「ギミドさん」 フィナは心配そうにいった。 「わたしはフィロソリスにまだ帰るつもりはないの」 「えっ?」 「目的があるの」 「フィナ王女、わたしはあなた自身で決断することを勧める。だから……」 「な、なんだ、眠くてしかたないんだな。大事なことは全部いったのか? ブルーさん」 「おやすみ、諸君……」 「――――」 しらけた沈黙が、船内にいる人間たち全員のブルーへの返事だった。 |
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